梅原猛の授業 仏教

梅原猛の授業 仏教
梅原猛,朝日新聞社,2002

梅原猛の授業 仏教

多くの日本人の拠り所であるべき仏教について,世界の他の宗教との関係,世界および日本におけるその歴史が分かり易く書かれている.他宗教との比較を交えながら仏教の教えを説明し,その教えを自分の生活に活かすことの重要性から,日本人が国際会社で果たしうる役割まで広範な内容を扱う.

「梅原猛の授業仏教」についてのメモ

釈迦の教えは,まず平等.人間は平等である.それから知恵.知恵によって人間は自由にならなければならなくてはならない.もう一つは慈悲.すべての人達に対して,生きとし生けるものに対してあわれみの心を持つ.

仏教の道徳というと,八聖道(はっしょうどう)とか,六波羅蜜(ろくはらみつ)ということがよく言われます.八聖道というのは,正見(しょうけん),正思惟(しょうしい),正語(しょうご),正業(しょうごう),正命(しょうみょう),正精進(しょうしょうじん),正念(しょうねん),正定(しょうじょう)の八つを言います.六波羅蜜は布施(ふせ),持戒(じかい),忍辱(にんにく),精進(しょうじん),禅定(ぜんじょう),智慧(ちえ)の六つを言います.

八聖道の正見というのは,正しい思想.人は正しい思想を持たなければならない.それにはどうしたらいいか.心が正しくなければならない(正思惟).言葉も,正しい言葉を使わなければならない(正語).それから正しい行いをする(正業).正しい言葉で正しい行いをすれば,正しい生活,きちんとした生活が送れる(正命).以下は必ずしも論理的順序ではありませんが,正しい努力をする(正精進).きちんと目的を立てる(正念).心を集中させる(正定)ことです.

六波羅蜜の布施というのは,恵み施すこと.持戒は道徳的規則を守ること.忍辱は,忍耐とはちょっと違うけど,耐え忍ぶこと.そして努力すること(精進),集中すること(禅定),知恵を持つこと(智慧).

精進と禅定と正語と忍辱.この四つがあれば,これからの人生,生きていけます.いま,この四つをしっかり持っている人は少ない.しかしこの四つの徳を守れば,きちんと生きていけるんです.だからと言って,うんと出世はしないかもしれない.出世には,上司に恵まれるとか時の運もありますから.だけど,失敗はしない.精進をして,集中力を高めて,正直で,耐え忍ぶことを知っていれば,人生うまくいきます.うんと出世しないかもしれないけど,充実した人生を送れます.

いま文部省が,生徒に奉仕活動をさせようと言っているでしょう.仏教には奉仕なんてないんです.キリスト教なら絶対の神様がいるから,そこに奉仕する.昔の日本だったら,天皇陛下というのは絶対の神様だから,それに奉仕する.だけど仏教は自分が仏なのだから,なぜ奉仕する必要があるのか.

坐禅をして仏になる.托鉢をして忍辱(にんにく)の徳を養う.私は奉仕より坐禅をしたり托鉢をしたりするほうがいいと思うんです.それは仏教的でよくない,一宗教に偏るといったら,奉仕だってキリスト教に偏っている.いまの識者は,宗教についてよく知らない.奉仕というのはキリスト教の道徳です.それに気がつかないほど,日本人は宗教について痴呆になっているんです.

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