バカの壁

バカの壁
養老孟司,新潮社,2003

バカの壁

「われわれは,自分の脳に入ることしか理解できない」ことに加えて,「自分が知りたくないことについては自主的に情報を遮断してしまっている」という状態.これが「バカの壁」ということだ.これ自体は別に凄いことを言っているわけでも何でもないが,本書には,色々と共感する内容が含まれていた.

常識は雑学のことではない.

本当は何もわかっていないのに,「わかっている」と思い込んでいる人が多い.

報道の思考停止.

本書の最終章「一元論を超えて」に,一元論あるいは一神教の世界観を超えて,日本がよって立つべき普遍的な原理についての考察がある.著者は,一神教のような普遍原理を提示できるわけではなくとも,「人間であればこうだろう」ということは考えられると説く.例えば,人が人を殺めてはいけないだろうとか,あまり欲をかいてはいけないだろうとか,そういうことだ.これは「常識」であり,究極的な普遍性ではないかというのが著者の思いだ.

これが究極的な普遍性か否かはともかく,国際社会における日本の役割を考えるとき,サミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」などにもあるように,日本の特殊性に目を向けてみる必要はあるだろう.

本書全体を通して,教育者としての嘆きがヒシヒシと伝わってくる.日本の教育は大丈夫だろうか.

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