不平等社会日本 さよなら総中流

不平等社会日本 さよなら総中流
佐藤俊樹,中央公論社,2000

不平等社会日本 さよなら総中流

あなたは本当に中流階級ですか? 不平等な社会に耐えられますか?

「不平等社会日本」についてのメモ

世間のニュースを聞いていると,責任感の喪失を感じる.どうして,こんなにも酷い社会になってしまったのだろうか.この問いへの1つの回答が述べられている.私なりに簡潔にまとめると,そういう人達は,ある職業に就きたくて自力で努力して就いたのではなくて,人生序盤をなんとなく生きていたらその職業に就けちゃったから,責任感を感じる必要性すら感じていない,あるいは責任感を感じることを拒絶しているということだ.特に,社会的に上流あるいはエリートと見られる階層に所属している人々は自覚を持って欲しい.

本書は,1995年およびそれ以前に行われた「社会回想と社会移動全国調査」(略称SSM調査)の結果に基づいて書かれている.数字による裏付けを得て,近年日本において階層が固定化されつつあり,その意味で戦前へと回帰していることが指摘されている.ある階層に所属する人の子供はその親と同じ階層に所属する傾向にあるということだ.責任感を喪失した上層と,将来への希望のない下層という構造の上に日本は成り立っており,その傾向が今後も益々強くなるとしたら,現在の延長線上に日本の将来像を思い描くこともそう難しくはないのではないだろうか.

私が現在所属する大学に入学することは難しいと世間一般では思われているし,実際に難しい.では,その難関を越えてきた大学生は,自分だけの力で所謂一流大学に入学したのだろうか.個々人については知る由もないが,一般的に言えば,有名私立学校や塾などで英才教育を受けてきた人が多いのではないか.そういう教育を受けるのには,ある程度の資金が必要だし,そういう教育を受ける機会が同年代の日本人すべてに与えられているだろうか.言い換えれば,たまたま生まれた家が良かったから,一流大学に入学することができたし,大企業でそれなりに出世する道も開かれているし,高級官僚になるチャンスもあるということはないだろうか.もちろん本人の努力や能力も必要だが,真に公平な競争を勝ち抜いてきたと言えるだろうか.

社会的に上流あるいはエリートと見られる階層にいる人々の子供は,より高い確率で一流大学に進むのだろう.そうして,社会的階層が固定化されていくのだとしたら,これは既得権益みたいなものでしかない.勉強もろくにしないで一流と世間が思い込んでいる大学を卒業し,大企業に就職して楽な人生を歩みたいと考えている学生の精神は,天下り先の特殊法人で税金を食い荒らす元役人のそれとどう違うのだろう.いや,そんな学生はいないことを願おう.

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