世界を不幸にしたグローバリズムの正体

世界を不幸にしたグローバリズムの正体
ジョセフ・スティグリッツ,徳間書店,2002

世界を不幸にしたグローバリズムの正体

国際的な経済危機の原因を作り,その危機を拡大させたのは,少なくともその責任の一部を負うべきであることが明らかなのは,危機拡大を防ぐことを公の目的としながら,実質的にウォール街に代表される金融界の利益を代弁する組織に成り下がってしまったIMFである.記憶に新しいアジアやロシアの経済危機,さらにアフリカや東欧における多くの発展途上国で起こった経済危機のときに,IMFがいかに危機を拡大させたかを克明に描いている.このような分析ができるのは,著者がクリントン政権や世界銀行の中枢にいて,国際経済機関の密室で何が行われているかを見聞したためである.IMFの問題点は,財政の均衡を重視し,自由化,民営化,さらに市場開放によってグローバル化を進めれば必ず経済は発展するという根拠不明のイデオロギーにIMFが固執し,それぞれの地域の実情などまったくお構いなしに,ワシントン・コンセンサスを世界中の弱小国に押し付けてきたことにある.そして,自分達の政策への反対意見には一切耳を貸さず,政策の失敗が明らかになっても,反省するどころか,責任を弱小国に転嫁し,自己弁護に躍起になったことにある.自分達の政策の所為で経済が破滅へ向かって進み出したときの決まり文句は,「この痛みを我慢しなければ,長期的な経済的発展はない.」である.この決まり文句を,どこかの国でよく耳にしなかっただろうか.日本経済に関心ある人は,この本を読む価値がある.

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