本書では,ビジネスプロセス全体において,企業が持つナレッジを最大限に活用し,組織や人が新たな価値を生み出すための取り組みを「ナレッジマネジメント」と定義している.ナレッジマネジメントは,1)気付き,動機付け,2)戦略の策定,3)仕組みの設計,4)プロトタイプおよびパイロット,5)導入,6)評価,発展および継続,の6ステップからなり,この6ステップをサイクルとして回すことにより,継続的な改善が実現される.このようにサイクルを回すという枠組みは,PDCAサイクルやシックスシグマでも同様である.しかし,この当然とも言えるサイクルが回らないのが組織である.そこには変革への抵抗が必ずある.したがって,ナレッジマネジメントを実現するためには,強力なリーダーシップと明確なビジョン,公正な評価体系,そして徹底したコミュニケーションが必要となる.もちろん,情報技術の活用は大前提である.このような立派な概念だけを述べられても実際には使い物にならないという意見に答える形で,本書には多くの例が記載されている.したがって,アーサーアンダーセンの考えるナレッジマネジメントが何であり,どのように実施するのかについて理解できるようになっている.さて,本書は外国人スタッフによって書かれているものと思って読んでいたら,執筆者は日本人だけだった.それなのに,あのカタカナの多さと日本語の下手さは何だ.顧客に言葉は通じているのだろうかという疑問は残った.
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