表題の通り,できるだけ数式を利用せずに,デリバティブのコンセプトを理解してもらおうという趣旨の本である.平易で具体的な例題を用いて,オプション価値や有効フロンティアなどの計算手順と計算結果が示されている.ただ,多変量解析などの入門書がそうであるように,特定の例題について具体的な計算手順を示す解説方法は,全体像が掴みにくく,煩雑で読みにくくなりがちである.本書も,同様の副作用は見られるものの,初心者がデリバティブの基本を理解するには有効であろう.ブラック・ショールズ式も平易に説明されている.前半の説明の中心は,スワップ取引とコールオプションである.後半は,投資家心理とマーケットの関係が描かれており,金融工学とはほとんど関係ないように思われる.ただし,実際に投資をするならば,心得ておかなければならない事柄ではある.
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