有望な投資対象として,投資家に商品を強く推奨する内容だ.およそ30年周期で上げ下げを繰り返してきた商品相場.21世紀のはじめ,長かった低迷の時代を終え,遂に商品の時代が来ると指摘する.
本書は2部構成になっており,第1部では,なぜこれから商品価格が上昇すると信じるのか,その理由を需給に焦点を当てて説明している.ジム・ロジャーズの分析は明快だ.歴史に学び,資料を分析し,自分自身が世界中を旅して目にした現実をふまえて,ファンダメンタルズから需給を推測する.その結果導かれたのが,21世紀最初の十数年は商品のパフォーマンスが他を凌駕するだろうという結論だ.需要の鍵を握っているのは,もちろん中国だ.石油をはじめとする天然資源は既に大幅に上昇しており,ジム・ロジャーズの正しさを実証している.彼が1998年に独自の商品インデックスRICIを開発して以来,RICIは既に3倍となっている.
ジム・ロジャーズは中国を大変有望視しているのだが,いずれ大きな調整が訪れる可能性が高いとも指摘している.もちろん,それがいつかはわからない.ただ,そうなったら,「株式も商品も買いまくれ!」ということだ.一方,日本ではBRICsの一角として人気のインドには否定的だ.
第2部では,個別商品について詳細な分析を披露している.石油,金,鉛,砂糖,コーヒーだ.金を除けば,現在は需給バランスが崩れ,需要が供給を上回る状況であり,相当な期間にわたって上昇する条件は整っていると指摘している.
本書には,商品が危険というのは迷信に過ぎず,実際には,株式よりもリスクは低く,リターンは大きいと書かれている.実は,これは研究によって裏付けられている事実だ.世間が抱いている商品は危険というイメージは,素人が10倍かそれ以上のレバレッジを効かせて先物取引を行い,大損する様子を見聞きすることから生まれている.それだけレバレッジを効かせて,目一杯の投資をすれば,何に投資しても財産を失うのは目に見えている.決して,商品という投資対象の問題ではない.また,株式と負の相関を持つ商品は分散投資という観点からも必須の投資対象である.このことは何度も繰り返し指摘されている.
商品投資を始めたい人は,本書を読んで,しっかり研究してから頑張ろう.商品先物投資に着手するのも良いが,商品ファンドという選択肢もある.最近,RICIをインデックスとする商品ファンドも登場している.全般に信託報酬が高いのが気になるが,それでも他人にお任せが良いという人には適しているだろう.
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