「青年の大成―青年は是の如く」に続き,安岡正篤氏の「人生と陽明学」を読んだ. 陽明学をまるで知らない浅学な私であるが,江戸時代から明治維新を経て近代化に進む日本国における学問の一部を垣間見ることができた. 陽明学とは,中国の明の時代に王陽明によって生み出された学問である.江戸時代初期の日本に伝来し,日本独自の発展を遂げ,幕末には吉田松陰を含め勤皇の志士達にも多大な影響を与えた.本書では,王陽明の人生とその著作「抜本塞源論」などの解説に加えて,日本で陽明学を学び,実践した江藤樹,熊沢蕃山,佐藤一斎,大塩中斎,森田節斎,岡村閑翁らのエピソードが生き生きと描かれている. 日本の政治や教育の有り様を憂い,修養を積んだ本物の人間が増えることを願う安岡正篤氏の心情が吐露されている.自分の生き様を考えさせてくれる一冊だ.ただ,漢文が出てくるので,学のない者には読むのが難しいのも確かだ. 今回は,京都と東京を往復する新幹線の車中で読むことができた.頻繁に東京に呼び出されるのは辛いのだが,2時間以上誰にも邪魔されない時間というのは,通常ありえないので,じっと書を読む機会を与えてもらったと思えば良いのかもしれない. |