幸せに生きるためにどうすればよいか.著名な心理学者である著者が,この問いへの答えを10の秘密として明かしてくれる.スピリチュアル・パワーというのは,超能力とか予知能力とか,そういう類のものではない.本書は,精神的に,霊的に,より高い次元で生きることの大切さと,そうするために心掛けるべきことを平易に示してくれる.
まず,10の秘密を示しておこう.
- 自分が持っていないものを与えることは出来ません
- あなたの過去を手放しましょう
- 静けさの中に癒しとひらめきがあります
- 正しい恨みというものは存在しません
- なりたいあなたに,もうすでになっているかのように振舞ってみましょう
- 問題を作り出したのと同じ心ではそれを解決することは出来ません
- あなただけの,世界にたった一つの音楽を奏でましょう
- あなたの中の神性を大切にしましょう
- あなたの力を弱めるすべての考えを退けましょう
- すべてに向かって開け放たれた心,そして,何ものにもとらわれない心を持ちましょう
読んで簡単に意味が分かるものもあれば,真意を酌み取りにくいものもあるだろう.
著者は,幸せに生きることを妨害しているのは,自分のエゴだと指摘する.自分のことばかり考えて,自分を他人と比較していると,常に他人と競争することになり,心の平穏など決して得ることはできない.他人と比較しなくても,自分のことばかり考えていれば,幸せに生きることはできない.幸せに生きるためにすべきこと,人生の目的,それは奉仕である.他者を愛するためには,自分の心に愛がなければならない.そのためには,自分を愛することができなければならない.自分自身を愛することができ,他者を愛することができれば,他者からも愛され,良いエネルギーを与えられる.反対に,恥や怒りの感情は,自分自身のエネルギーを弱め,悪循環を引き起こす.幸せに生きるためには,「いま」,この瞬間を大切に生きなければならない.不幸の理由を過去に押しつけてみても,幸せにはなれない.過去は過去として切り離し,未来は未来として切り離し,いま,この瞬間を自分が自分の理想とする姿になっているかのように生きる.そうすれば,実際に,そのような姿になる.考えたことが現実になる.
本書に限らず,金儲けをするとか,巧妙に生きるとか,そういうことではなく,幸せに生きるための方法を示そうとする先人達に共通する主張は,神と共にあることを感じなさいということだろう.もちろん,ここでの神というのは,特定の宗教の神ということではなく,より高い次元で,全人類を,全宇宙を,過去から未来まで,つないでいる偉大なる力という意味である.
私自身は宗教心が極めて希薄なのだが,そういう偉大な存在と繋がることで心豊かに幸せに人生を送れるという主張には,素直に共感する.
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