フィンランドの国語教科書で採用されている方法や,教育現場で用いられている方法を,発想力,論理力,表現力,批判的思考力,コミュニケーション力の5つの力を身に付けるための方法として整理し,フィンランド・メソッドとして紹介している.例えば,以下のような方法だ.これが全てではない.
発想力: マインド・マネージャ(シンキング・マップ)を利用する.
論理力: あらゆる意見や感想に対して,「どうして?」と質問する.
表現力: 多くの単語をすべて使用して一番短い文章を作る.
批判的思考力: 他者の作文の良い点と悪い点を十個ずつ挙げる.それを元に何回も書き直す.
コミュニケーション力: 相手の立場に立って考える.本心と本心ではない意見の2通りで論理構成する.
紹介されている方法は非常に理に叶っており,その一部または全部を日常的に活用しているという人も少なくないだろう.私の所属する研究室の場合だと,学生に対する「どうして?」攻撃は凄まじいし,レポートの書き直しも徹底している.その結果として,論理力,表現力,批判的思考力などが鍛えられていることは確かだろう.
ただ,日本の初等・中等教育の場では,こういう方法が活用されているようには思われない.学校でないと利用できないような方法ではなく,家庭でも実践できる内容なので,興味を持った人は気軽に試してみたら良い.
本書は非常に薄い本で,あっという間に読めるし,具体的な例を挙げてフィンランド・メソッドを紹介しているので,理解しやすい.PISAとは何だとか,学力とは何かとか,フィンランドの文化がどうとか,そんな小難しい話はどうでもよくて,結局どうしたらいいのかという問いに対する答えを求めているなら,とにかく本書を一度読んでみたら良いと思う.
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