スタンフォード大学の大学院生が起こした検索エンジン会社グーグル.IT/ネット企業としても比較的新しい会社だが,本書の副題の通り,まさに世界を変えたと言えるだろう.今や,普通の人が,普通に,ググる.そして,世界中の情報にいとも簡単にアクセスできる.
本書は,グーグルに焦点を合わせて書かれているが,ネット黎明期から現在に至るまでのネット業界や検索エンジンの歴史に触れることができる.それも,表面的な年代記としてではなく,ネット界の大物達が何を考え,どういう目的で,どのような行動をした結果,現在我々が知るような歴史が生まれたのかを雄弁に語ってくれる.後半では,ウォールストリートを賑わせたグーグル株式公開(IPO)までの経緯も克明に描かれている.
もちろん,本書には,検索の過去だけではなく,未来も描かれている.検索エンジンが目指すもの.それは検索者の意図を把握した検索だ.あなたが何者で,何を知りたくて,今,検索画面にキーワードを打ち込んでいるのか.それを正しく推論して,最も相応しい検索結果を提供する.このような完全な検索が実現されるのは,いつだろうか.
しかし,検索エンジンの現在は決してバラ色ではない.中国などでの検閲行為は既に大きな社会問題となっている.検索エンジン会社が,特定の政府の意向を受けて,その国民が特定の情報にアクセスできないようにしてしまうことは許されるのだろうか.
さらに,プライバシーの問題もある.今や,ウェブ検索だけではなく,デスクトップ検索機能も各社から提供されている.あなたのコンピュータの内容は既にインデックス化されているのだ.つまり,あなたのコンピュータの中身をのぞく意図があれば,のぞくことができるし,それをネット上の公開することもできてしまう.
大きな問題を孕みつつも,進化を続ける検索.今後,どのような社会を創り出すのか,目が離せない.
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