ソビエト社会主義共和国連邦がまだスーパーパワーとして世界の一極をなしていた1978年に,2000年までに共産主義は崩壊すると予測し,的中させ,一躍脚光を浴びたラビ・バトラ教授.その他にも,イラン革命などいくつかの大胆な予測は既に現実となっている.ラビ・バトラ氏が共産主義崩壊を予測したとき,同時にもう1つの予測を行っている.それが2010年までに資本主義は崩壊するというものだ. 本書は1994年に書かれたものであるが,資本主義崩壊の予測について,その必然性を示すとともに,資本主義崩壊後の社会システムの在り方を提案している.1995年以降に世界は恐慌に陥り,2010年までに資本主義は崩壊するというのが予測の骨子だが,この予測の背景には「社会循環の法則」がある.この法則は,ラビ・バトラ氏が師と仰ぐサーカー氏が提唱したもので,いかなる社会においても政治的な力の源泉は,武力,知識,富の三つしかありえず,まさにこの順で支配が変遷するという法則だ.
現在の欧米諸国が「富裕者の時代」の末期に位置していることは改めて指摘するまでもないだろう.ちなみに,日本は,少し遅れて「富裕者の時代」に入ったとされる.著者は,資本主義腐敗の象徴として,デリバティブによってカジノ化した金融システムを挙げている.そして,富の集中が社会的諸悪の根源であると指摘する.
恐慌が起こる理由について,本書には次のように書かれている.
この表現からわかる通り,著者は経済学者でありながら,その考え方は実に精神的・霊的な側面が強い.これはサーカー氏の影響によるもので,著者は以下のような教えを受けたと書いている.
そのサーカー氏の思想をもとに,資本主義崩壊後の社会システムの在り方を示すのが「プラウト(Progressive Utilization Theory)」だ.プラウト理論は,富の集中が社会的諸悪の根源であり,それをいかに合理的に防ぐかが大事であるという考えを基礎としている.そこで,医療と教育については社会が個人に無料で保障すること,熟練していない肉体労働者が最低限の生活を送れるだけの最低賃金を保障すること,最高賃金は最低賃金の十倍(究極的には二倍)を上限とすることなどを提唱している.この他にも様々な提言があるのだが,特筆すべきことは,プラウトが精神性を非常に重要視していることだ.この点について,本書には以下のように書かれている.
正直なところ,恐慌ぐらいはイメージできても,資本主義の崩壊が何を意味するのかは,私の理解を超えている.しかし,それでも,現在の世界の延長線上に人類の幸福があるとは思えない.幸福どころか,あるとすれば滅亡だろう.そのような状況の中で,プラウトという考え方には興味を覚えた. 実は,ある人の強い勧めで本書を読むことになったのだが,偶然にもその前に,中矢伸一氏の「日月神示 ミロクの世の到来」(徳間書店,2007)を読んでいた.その中で「プラウト」が紹介されており,ちょうど興味を持っているところだった.これもシンクロニシティだと言うのだろうか. |