因果応報.善くも悪くも,過去の自分の行いの結果が現在に現れ,現在の自分の行いの結果が将来に現れるとする.これは仏教の思想であるが,輪廻転生を真とすれば,過去の自分の行いというのは,現世での行いに限定されないことは理解できるだろう. この因果応報を別の言葉で言うと,原因と結果の法則となる.ジェームズ・アレンの「「原因」と「結果」の法則」には,自分の人格はもちろん,自分を取り巻く環境や事の成否はすべて自分の思いの結果であると書かれている.これは昨今の成功哲学の基盤となっている考え方である. 東洋哲学も同様の考え方を有している.例えば,安岡正篤氏はその著書「知命と立命」の中で,「人間も,人生そのものが一つの「命」である.それは絶対的な働きであるけれども,その中には複雑きわまりない因果関係がある.その因果関係を探って法則をつかみ,それを操縦することによって,人間は自主性を高め,クリエイティブになり得る.つまり自分で自分の「命」を生み運んでゆくことができるようになる.」と書いている. さらに論を進めると,因果応報,原因と結果の法則の主体は,必ずしも人間個人に限る必要はない.国家や民族など,集団としての行いにも,当て嵌めて考えることができる. 洋の東西を問わず,時代の新旧を問わず,心ある人が語っているのは,この因果応報あるいは原因と結果の法則と呼ばれるものが真であるということだ. ここでの問いは,「良い結果を得るために,何をすべきか」ということだろう.この問いに対する本書の回答は,最後のメッセージにある.
具体的には,人々や動物たちに親切にできる機会があれば親切にし,思いやる機会があれば思いやるということだ.出会いのすべては生命に貢献する機会であり,その機会に我々は自分の判断で自分の行動を選択している.その選択の結果が我々の人生を決めているわけだ.外から与えられた運命が我々の人生を決めているのではない. そこで,次のような問いを発することが有効とされる.
この問いを発し,他を愛する心で自分の行動を選択すれば,素晴らしい人生を送ることができると書かれている.
さて,以下のことを書くべきかどうか迷うのだが... これらのメッセージは,本書のタイトルにあるハトホルと呼ばれる集合意識からのものとされる.ハトホルとは,古代エジプトにおける,天空,豊饒の女神の名であるが,本書で言うハトホルとは,ハトホル女神そのもののことではなく,ハトホル女神を通して古代文明にも影響を与えた存在のことである.それは既にアセンションを経た存在であり,人類が意識を高めるための助言を提供している. 好き嫌いがハッキリわかれる本だろう.いや,生理的に受け付けないという人が少なからずいると言った方が良いのかもしれない.だから,この本を押し付ける気は全くない.だが,私の心には訴えかけるものがあったし,読むべき時に読んだと思う. |