下流社会 新たな階層集団の出現

「下流社会」というインパクトのあるタイトルだが，内容は大したことはない．以前読んだ佐藤氏の「不平等社会日本　さよなら総中流」（中央公論社，２０００）ほどの説得力がなく，アンケート結果の説明にも工夫がなく，数字の羅列で読みにくい．

日本が階層社会に向かいつつあることや，階層が固定化されつつあることについて知りたいのであれば，前出の「不平等社会日本　さよなら総中流」を読むことを勧める．さらに興味を持ち，かつ時間が余っているなら本書を読むのも良いだろう．

なお，日本が階層社会に向かいつつあることや，階層が固定化されつつあることについては，そもそも，この種の本を読むような人達は当然気付いているわけで，そういう現象が国勢調査やアンケートの結果から裏付けられたということ以上のものは類書からは得られそうにない．この傾向を阻止する意図があるのであれば，講じるべき対策を示して欲しいところだが，本書で示されている第一の対策は「貧乏人の子供には大学入試で下駄を履かせろ」だ．お粗末ではないだろうか．トップクラスの国立大学の学費無料化やノーブレスオブリージという観点には賛同するが．．．